フィリピンで新たな法案成立、法人税率を引き下げ財政優遇措置を強化
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日本の投資家向けメリットを強調
フィリピンのマニラ - Media OutReach - 2021年4月12日 - フィリピンは、法人税率を最大10%引き下げ、財政優遇措置の合理化により、同国史上最大のビジネス景気刺激策となる画期的な法律を制定しました。
ロドリゴ・R・ドゥテルテ大統領は3月26日、2月のフィリピン議会合同委員会の承認を受け、連邦法第11534号「「企業復興税優遇法案(CREATE)」に署名しました。
この新法により、フィリピン政府は今後10年で企業に対して約1兆ペソ(約2兆3,000億円)相当の優遇税制が取られることになります。
財務長官のカルロス・ドミンゲス3世は同法の施行に際しての声明の中で、CREATEの制定が、「フィリピンが再度、投資誘致、雇用創出、包括的な成長の実現に向けて動き出したことを他国に発信」することになると述べています。
CREATEによって拡大するインパクト
CREATEは国内に留まらず、日本をはじめとする海外からの投資を呼び込み、雇用創出支援に役立つと考えられます。また新型コロナウイルス禍での企業やフィリピン経済全体のスピーディな復興にもつながります。
CREATEは、純課税所得が500万ペソ(約1,100万円)以下、土地を除く総資産が1億ペソ(約2億2,000万円)以下の中小企業を対象に、法人所得税(CIT)を30%から20%に引き下げます。また、大企業についても他のASEAN各国と同様の25%まで税率が引き下げられます。
また、CREATEにより財政優遇制度も合理化し、政府が優先する特定の業界や地域への投資家に対して対象を絞り込んだ競争的なさまざまな税優遇措置が取れるようにします。
特に、フィリピン政府による「戦略的投資優先計画(Strategic Investment Priority Plan 、SIPP)」に該当する投資を行う企業に対しては、4~7年間の法人税免除制度(ITH)が利用でき、その後もさまざまな優遇税制が適用される可能性があります。
輸出企業に対しては、ITHに続いて、10年にわたる5%総所得課税(GIE:グロス・インカム・アーンド)の適用、もしくは課税所得に対する幅広い控除が10年間にわたって認められる「追加控除」の2つのオプションのいずれかを選択して享受することができます。
輸出企業以外の企業も、ITHの適用終了後、5年間にわたって「追加控除」制度を利用することができます。
さらに、マニラ首都圏(NCR)以外の地域に移転した企業はITHを3年間追加して享受できるほか、災害復旧地域や紛争地域に拠点を置く企業についてはさらに2年間、免除が延長されます。
こうした展開と併せ、政府所有で政府の管理下にあるフィリピン基地転換開発公社(Bases Conversion and Development Authority:BCDA)は、日本の投資家がフィリピンで事業を展開することに大きな意義があると考えています。
BCDAのプレジデント兼最高経営責任者(CEO)であるヴィヴンシオ・B・ディゾン(Vivencio B. Dizon)氏は、フィリピンの不動産業や製造業に多数の日本企業が進出している点を指摘しており、BCDAがマニラ北部のクラーク地域に開発した地域には、さまざまな種類のメーカーやビジネスプロセスアウトソーシング、ソフトウェア開発、倉庫保管、運送業、観光施設、オフィススペースなど、日系企業43社が操業を行っています。
CREATE法の成立によって、フィリピンは海外からの投資誘致を期待すると同時に、日本からもさらに多くの投資家や事業家を惹きつけることを見込んでいます。
BCDAのディゾン氏は、「日本のパートナーにとって、交通や物流設備が充実している工業地区の存在だけなく、フィリピンがアジア太平洋地域の主要な貿易ルートにアクセスできる位置にあることも大きなメリットになっています」と述べ、さらに、「勤勉で我慢強く、家族を大切にするフィリピン人は日本人と共通する価値観を持っており、日本の企業にとって理想的な質の高い労働力が提供できます」とも述べています。
CREATE法のほかにも、フィリピン政府の経済担当者は外国投資法や公共サービス法、貿易自由化法の改正など、経済のさらなる自由化につながる他の改革法案の早期成立を推進しています。
日本とフィリピンとの経済関係
フィリピンと日本の政府は先ごろ、両国の経済協力関係をさらに強化していくことを再確認しました。
2020年中、日本はフィリピンにとって最大の輸出国であり、2番目に大きな輸入国でした。昨年1年間、日本はフィリピンにおける最大の海外直接投資(FDI)国でもあり、再投資利益を除く純資本FDIの47.35%を日本が占めました。
越川和彦駐フィリピン日本大使は先ごろ、フィリピン中央銀行(BSP)のベンジャミン・E・ディオクノ(Benjamin E. Diokno)総裁と、カルロス・ドミンゲスIII世財務長官をそれぞれ表敬訪問した際に、日本の対フィリピン投資を拡大する計画について述べ、越川大使は日系企業がフィリピンを含めた各国のサプライチェーンの再編成の道を模索していることに言及しました。
BSP総裁はフィリピンと日本の経済関係強化について、フィリピンが日本からの投資を受け入れる一方、日本はフィリピンから高学歴で英語に堪能な若手人材を得ることができ、双方にメリットがあることを指摘しました。
越川大使はまた、日本にはフィリピンの零細・中小企業(MSMEs)振興を全面的にサポートする用意があることを改めて強調しました。実際に、国際協力機構(JICA)は昨年12月にBSPと共同で開始した信用リスクデータベース・プロジェクトに参画し、MSME向けに一元化した信用データベースを構築することによって、銀行融資へのアクセスの大幅な強化を見込んでいます。
同大使は総裁に対して、BSPが政策金利や銀行準備金所要額の引き下げなど、コロナ禍における経済へのダメージを緩和するために中央銀行として積極的な対応を図ったことを称賛し、財務長官との会談においても、画期的なCREATE法の成立を祝福しました。
フィリピンの主要指標
フィリピン経済が順調に回復の兆しを見せていることは国際的にも認知されており、その理由の1つとして、パンデミックの影響に正面から対処するための十分な財政・金融面での余裕が国内にあるといった健全なマクロ経済のファンダメンタルズが挙げられます。政府は今年の経済成長率を6.5~7.5%と予想しています。
世界的な信用格付けの引き下げや見通しの下方修正が相次ぐ中、フィリピンは投資適格の格付けを維持しており、フィッチがBBB、ムーディーズもこれに相当するBaa2(いずれも最低投資適格を1ノッチ上回る格付け)、S&Pではさらに高いBBB+の格付けを取得しています
昨年、日本格付研究所(JCR)はフィリピンの格付けを1段階引き上げてA- とする一方、同じく日本の債券ウォッチャーである格付投資情報センター(R&I)はフィリピンの格付けを1段階引き上げてBBB+としました。いずれも経済の先行きが明るいことをその理由に挙げています
フィリピン政府によるサムライ債の発行
日本の債券ウォッチャーの好意的な評価は、サムライ債を発行するフィリピンの資金調達活動に好ましい兆候をもたらしています。フィリピンは3月30日に3年満期のゼロクーポン債を発行してサムライ債(海外の発行体が日本国内で募集・発行する円建て債券)市場に復帰しました。
今回のサムライ債は、ベンチマークとのスプレッドが21ベーシスポイント(BPS)だけで、2018年にフィリピンがサムライ債市場に復帰して以来、最もタイトなスプレッドになっています。投資家の旺盛な需要により、募集規模は当初の300億円から550億円へと大幅に増額されました。
当プレスリリースはフィリピン政府に代わり広報代理店BCWが配信しました。
追加情報はアメリカ合衆国法務省に記録されています。